研究概要
A01
冬眠発動の分子機構:深冬眠実行の分子基盤と飢餓性休眠との共通性の解明
北海道大学低温科学研究所・教授
(計画代表)
福山大学薬学部・准教授
(分担)

A02
能動的低代謝の分子機構:冬眠様低代謝の誘導による休眠省エネ機構の解明
理化学研究所 生命機能科学研究センター・上級研究員
(計画代表)
私の研究チームでは冬眠のような能動的低代謝を臨床に応用するための研究開発を行っています。臨床において患者の代謝を安全に低下させることは大きな意味を持ちます。急性疾患の最重症期を乗り切ることや重症患者の搬送など、代謝が高いことが問題となる事象に対して、低代謝はプラスに働くことが予想されるからです。そこで、マウスを用いて能動的低代謝の原理を明らかにし、人間の臓器・細胞に同様の機能を組み込むための研究開発をミッションとしています。マウスは絶食により数時間という日内休眠を誘導できますが、最近になってマウスを冬眠のような数日に渡る低代謝状態に誘導することに成功しました。本領域研究では、冬眠様状態のマウスを用いた研究開発を進めていく予定です。

理化学研究所生命機能科学研究センター・チームリーダー
(分担)
最先端の生殖・発生工学技術を駆使した遺伝子改変マウス・ラット作製支援を国内外に展開しています。また、遺伝子改変動物作製の効率化、高速化を目指した技術開発を行うとともに、医学・生物学研究分野において汎用性の高い種々のレポーターマウス系統の開発を通してマウス初期胚を用いた発生研究などを進めています。本領域研究では、冬眠制御機構と生物多様性に関する理解を推進するために、新たなモデル動物の開発にも取り組みます。

A03
冬眠温度受容の分子機構: 温度感受性TRPチャネルの意義の解明
自然科学研究機構 生理学研究所 細胞生理研究部門/生命創成探求センター・教授
(計画代表)
温度感受性TRPチャネルに焦点をあてて分子生物学的・生化学的・電気生理学的・行動解析学的実験手技を駆使して分子から個体まで温度受容・侵害刺激受容の分子メカニズムの研究を行っています。また、温度感受性TRPチャネルの進化研究も行っており、研究室にはマウス、ハムスターのほか、カエルやショウジョウバエがいます。冬眠に温度感受性TRPチャネルがいかに関わっているかという新しい研究を開始しました。

A04
冬眠動物の概日時計の分子機構:カルシウムを基軸とした低温リズム発振機構の解明
自然科学研究機構 生命創成探求センター/生理学研究所 バイオフォトニクス研究部門・准教授
(計画代表)
哺乳類の概日リズムの中枢は,脳深部の視床下部領域にある視交叉上核に局在し、脳の他の領域や全身の末梢臓器へリズム情報を伝えることで、睡眠覚醒サイクルやホルモン分泌、体温、行動リズムといった全身の約24時間の生理機能を調節しています。私はこれまでに長期間で撮像する為の蛍光イメージング計測法を確立し、細胞内カルシウム濃度や膜電位変動などを高精細に可視化することで、視交叉上核のリズム発振メカニズムを探究してきました。本領域研究では、細胞内カルシウムシグナルを基軸に冬眠動物における生物時計の発振メカニズムについて探究して行きます。

名古屋大学トランスフォーマティブ研究所・特任講師
(分担)
睡眠・覚醒などの約1日の生理リズムは、体内時計によって生み出されます。この時計は、温度を低下させても時計の周期がほぼ一定に保たれる性質・温度補償性を有します。多くの生化学反応は低温で速度が低下することを考慮すると、この性質は非常に不思議であり、そのメカニズムは長い間議論されてきました。私たちはこれまで、体内時計の温度補償性を担う新規の低温応答シグナリングを見出し、動物、植物、細菌の時計でも機能することを確認してました。本領域研究では、太古の生命から引き継がれている低温応答システムが冬眠動物の極限的な低温生理にどのように機能しているのかを明らかにします。

