研究概要

哺乳類の冬眠は、古くから知られているにも関わらず、その生理機構の多くは未解明な魅惑的な現象です。哺乳類の多くは寒冷下でも体温を37ºC付近に維持し活動が可能です。これは体内で熱産生を行い体温を一定に保つ恒温性を有するためです。しかし、熱産生のエネルギー源である食料が枯渇し寒冷に見舞われる季節には、体温維持のためのエネルギーコストが問題となります。こうした寒冷・飢餓といった危機的環境下において、積極的に熱産生と代謝を抑制し消費エネルギーを削減し、通常の恒温性から逸脱した低体温となった状態で生き延びる現象を、休眠(Torpor)と呼びます。この休眠が数ヶ月に渡り繰り返され厳しい季節を乗り越える現象が、冬眠(Hibernation)です。ヒトはこうした冬眠・休眠は行えませんが、冬眠・休眠現象自体は霊長類を含めた哺乳類のあいだで幅広く観察されます。そのため、哺乳類が普遍的に備える恒温性機構のわずかな変更で冬眠・休眠状態が誘導されるとも考えられます。しかし、分子機構の手がかりや研究の方法論において、いまだ冬眠・休眠の理解にはほど遠い現状があります。本学術変革領域研究B「冬眠生物学」では、分子機構・研究方法論いずれの側面からも突破口を得て、哺乳類の冬眠・休眠の理解に向けた新しい一歩を踏み出すことを狙います。
Stacks Image 132

領域構成メンバー

研究班

A01
「冬眠発動の分子機構:深冬眠実行の分子基盤と飢餓性休眠との共通性の解明」
山口良文
北海道大学低温科学研究所
領域代表・計画代表
Stacks Image 67
渡邉正知
福山大学薬学部
計画分担
Stacks Image 65
A02「能動的低代謝の分子機構:冬眠様低代謝の誘導による休眠省エネ機構の解明」
砂川玄志郎
理化学研究所生命機能科学研究センター・計画代表
Stacks Image 80
清成寛
理化学研究所生命機能科学研究センター・計画分担
Stacks Image 82
A03「冬眠温度受容の分子機構: 温度感受性TRPチャネルの意義の解明」
富永真琴
自然科学研究機構生理学研究所 細胞生理研究部門/生命創成探求センター・計画代表
Stacks Image 134
A04「冬眠動物の概日時計の分子機構:カルシウムを基軸とした低温リズム発振機構の解明」
榎木亮介
自然科学研究機構生命創成探求センター/生理学研究所・計画代表
Stacks Image 98
金尚宏
名古屋大学トランスフォーマティブ研究所・計画分担
Stacks Image 100
領域アドバイザー

櫻井 武(筑波大学)
梅田 眞郷(京都大学名誉教授)